2012年9月16日

釉庵窯にお邪魔しました。

日本滞在中に、以前から会ってみたいと願っていたアーティストの工房にお邪魔する機会がありました。今日はその、陶芸家ユアン•クレイグさんの工房と彼のご家族を訪ねた際のことを振り返りたいと思います。


ろくろを披露するユアンさん

ユアンさんはオーストラリア出身の陶芸家で、益子を拠点にしてもう20年以上ものキャリアをお持ちの方です。益子で著名な濱田庄司氏と親しかったイギリス出身の陶芸家バーナード•リーチ氏の存在もあり、イギリスでも、益子や濱田氏の名前は大きく取り上げられています。その濱田庄司氏の一番弟子であり、人間国宝でもあった故 島岡達三氏に、ユアンさんは弟子入りされています。それを聞くと、日本で陶芸家として大活躍されているのも、ある意味不思議ではないような気がしますが、私が一番惹かれた理由は、著名な名前の数々ではなく、ユアンさんの言葉からにじみ出る人間らしさと感性に深く共感したからです。

ユアンさんのブログを初めて知ったのは、私がshin shin日本語版をちょうど始めた2年前位だったと思います。焼き色がとても優雅な作品が目に留まり、そのままお話を読み始めてすぐ、引き込まれるような気持ちがしたのを覚えています。ユアンさんが陶芸のお話を書かれると、とにかくその情報の豊かさ、丁寧さにびっくり。素敵なイメージと合わせて、長年築き上げて来た彼の知識や技術、独自のこつやデザインの仕組みなど、それこそ惜しみないかのようにシェアーしてくれています。また、家族の事や自然、生き方の概念なども書かれていて、彼の言葉は優しく、美しく、そしてたくましくもあり、読む側の心に響いては、人生の教訓のように感じたりします。奥様のみかさんは、日本語版のブログをかかれているので、すんなり読んだりお返事できたりした為、いつのまにかお二人が憧れの存在となりました。

工房の静けさを映す風景は、ここまでの道のりを語るかのよう。

ユアンさんご一家の生活は、昨年の大地震により一変します。壊れた窯やお家を直すのはもとより、目に見えない放射能への不安に問いかけ始めます。4人のお子さんを持つユアンさん、長く拠点にした益子を離れ、さらに安全な土地での再出発を決心。一言では説明しきれないような、長いアップダウンを超え、群馬県みなかみ町に移り、今に至っています。新しく拠点としているのは、みかさんの亡き叔父さんのお家。もともと絹工房だった母屋は、長年手を付けず、かなり荒れ果てた状態。ゼロからのスタートに、一つずつ、毎日毎日手をかけて、冬を迎える前に子供達が暖かく住めるようにと励まれました。将来への不安に押しつぶされそうになりながら、家族の安全の為に手探りで前進する中、子供達も必死でお手伝い。その様子は、時折お二人のブログで拝見しましたが、困難な中での強い家族の絆に胸を打たれました。

釉庵窯オープンの看板

ちょうど私達が日本に経つ直前、ユアンさんがビジネスを再開したことを知ります。地震に堪えられるような、そして自然にできるだけ悪影響を与えないように作られた新しい窯。焼きに使う薪も放射能の影響がないかきちんと測定してもらい、その安全性を認められる通知が届いてのこと。おめでとうが言いたい。そんな一心で連絡したところ、工房へお伺いする旨となりました。ユアンさんご一家のお家は、山に囲まれ、空気のおいしい自然の中にあります。皆さん笑顔でとてもご親切に迎えてくれました。

新しい窯もついに!

ユアンさんの説明を聞きながら、お家のあちらこちらや、工房、そして新しい窯を拝見。もともと濱田庄司窯の工房にあり、お孫さんの濱田友緒さんから頂いたという蹴ろくろを挽くユアンさんの姿を見たり、彼独自の技や装飾方法を細かく説明してくださったり。なんとも貴重で素敵な時間でした。2階には窯入れを待つ作品がきれいに並べてあり、「これがだいたい一日作業分」と指を指したのが、100個はある丁寧に挽かれた器たち。うわーすごい。窓から光が差し込むと、飛びかんなの模様が一段とあらわに映り、感激してため息が出そう。

飛びかんな模様が美しい器達

そんな優雅な風景の中、ユアンさんは彼の生き方、哲学を優しくそしてしっかりと語ります。「私は自然に逆らわないシンプルな人生を送りたい。できるだけエコロジーな生活方法に心がけて、毎日を感謝したい。そうして作り上げたものを喜んでくれる人がいれば、それで十分幸せです。」お家や工房を拝見すると、まだまだ手をかけなければいけないところは山ほどあります。でも、今までを振り返っては、ここまでやって来れたことへのありがたさを痛感しているユアンさん。「友人達の協力がなければ、ここまでこれなかった。」ユアンさんの感性はとても純粋で、態度はとても謙虚。彼の書く文章から想像していた通り、堅実で正直なユアンさんは、人生を素直に受け止めています。

魅了される器達の数々と末息子さん。母屋の二階で。

庭を元気に駆け回る子供達を見ると、この一家の心地よさが分かります。彼らだって、ここまで来るのに不安で大変な日々だったでしょう。みかさんは、そんな道のりを思い出してはこうおっしゃいます。「沢山の人に支えられました。例えば、かけていただいた言葉だけでも、辛い時、不安な時、前を向いていく支えになりました。」母親にとって、子供達の笑顔をまた見ることが出来る事は、どんなに気が安らいだことでしょう。

益子で生まれたユアンさんの花器に、ヨークシャーのスイトピーを生けて。

私達は、ユアンさんの作品を2点持って帰って来ました。その中でも、私が特に好きなのがこの花瓶。底面に近い脇にちょこっとだけへこみがあります。「地震からの大きなダメージを免れた」跡だそう。私達が決して忘れることのない「あの日」の跡。私には、その花瓶のへこみが、生き残り、新しい人生を歩む運命の印のように見えました。そして、それは自然が美しくて厳しいものであることを覚えさせてくれる印、人生に感謝する大切さを教えてくれる印のように思えました。この花瓶を見る度、光栄にもユアンさん一家の純粋な生き方をちょっとだけ分けてもらっているような気がします。

ユアンさん、みかさん、子供達のみんな、どうもありがとう。

ユアンさん、この秋11月1日から5日まで開催される益子秋の陶芸市に出展されるそうです。ご興味のある方、ぜひ足を運んでみて下さい。きっと素敵な器との出会いがあるのは間違いありませんよ。xま

ユアンさんの素敵な作品はこちらをクリック。
みかさんの日本語版はこちらをクリック。

4 件のコメント:

  1. 私たちも、まきさんたちにお会いでき、
    とてもうれしかったです。
    ありがとうございます♪

    人は支え合って生きているのだと感じる中、
    同時に人の縁の不思議さに感動を覚えます。
    このご縁を大切にしていきたいです。
    これからもよろしくお願いします。

    まきさんのご活躍をここから応援しています。

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    1. Mikaさん、人との縁って不思議ですよね。忙しいから毎日だからこそ、ご縁を大切に生きていきたいと、私も思います。また、どちらかでお会いできるといいですね。ケーキとってもおいしかったです!本当にありがとうございました。

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  2. 素敵な訪問でしたねー!私もユアンさんのブログには、オーストラリア陶芸家の誰かのページからたどり着いたことがあって、見たことがありました。
    最近はお引越しされたんですね。私も民藝の哲学がとても好きなので、
    イギリスと益子のつながりなど、すごいなーとよく関心していたものです。^^
    民藝の心、海外に出ているからこそ、忘れたくないなーと思います。

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    1. ponzuさん、メッセージどうもありがとうございます。
      民芸の良さってやっぱりマジかで手に取ってみると素晴らしいですよね。しかも海外出身の方が、こうやって日本の民芸をされているのを見て、嬉しい気もしました。ユアンさん、日本人よりも日本人らしいところもありますし(笑)。私達、海外生活している分、日本のこと疎遠にしたくないですね。

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皆さんからのコメントには大感謝です。xま